民事・刑事を問わずいつでも気軽に相談できる弁護士 佐藤嘉寅 佐藤嘉寅法律事務所

痴漢事件 起訴と公判手続き

それでは、略式手続きで終わらずに正式な裁判となった場合の手続きの流れについて説明します。

起訴後の流れ、公判手続きについては、痴漢事件に限らず、どのような事件でもほとんど同じ手続きの流れとなります。

 

起訴後の流れ 

検察官が起訴をすると、その時から被疑者であった者は被告人となります。実際には、起訴状を受け取り、今までと同じように、警察署に留置されたままなのですが、捜査手続きは終了していますので、取り調べを受けることは原則としてはありません。ただし、余罪がある場合には、起訴後捜査がなされる場合もあります。

東京の場合には、起訴後、1月~2月以内の公判期日が指定され、刑事裁判に備えることとなり、公判期日の2~3週間前に、東京拘置所に移管されることになります。

起訴されると、保釈請求が可能となります。

身柄拘束されている場合には、まず、保釈請求を行うこととなります。

 

公判手続き 

起訴され公判期日が指定されると、いよいよ裁判手続きが始まります。公判手続きは、簡単にいうと次のような手続きですすみます。

 

1 冒頭手続き

  人定質問

  まず、裁判が始まると裁判長が被告人に対し、人違いでないことを確かめるため、被告人の氏名、年齢、職業、住居、本籍について質問をしま す。これが人定質問です。

  実際、裁判の場に引き出され、人定質問で人違いが分かったという例もあるそうですので、形式的な手続きではありますが、きちんと注意して返答をすることとなります。

 

  起訴状朗読

  次に、検察官により起訴状の朗読がなされます。すでに、被告人のもとには、起訴状謄本が送達されているはずですので、内容は分かっているはずですが、後の罪状認否に備え、注意深く聞いておく必要があります。

 

  黙秘権の告知等

  被告人は、自分の話したくないことは話さなくてもかまいません。そして、一度話したことは、被告人の有利にも不利にも取り扱われます。沈黙は金という言葉もあるとおり、否認している場合には、すべて黙秘していた方がよい場合もあります。

 そのため、裁判長は、被告人に認められた憲法上の権利としての黙秘権を告知することになります。

 

  罪状認否

  最後に罪状認否が行われます。

  罪状認否は、検察官が朗読した起訴状の内容が正しいか否か被告人が意見を述べることをいいます。争いがなければ、起訴状のとおり間違いありませんと述べればいいですし、間違いがあれば、間違っている点を指摘することとなります。特に、完全否認事件の場合、細かい認否については、弁護士に任せた方が無難です。弁護人が述べるとおりです、という回答で構いません。

  起訴状の内容に誤りがないということであれば、2,3回の期日で裁判は終了しますが、争いがある場合には、かなりの回数、裁判期日を重ねることとなります。

 

2 証拠調べ

 起訴状の内容が開示されたら、その事実が証拠によって立証できるか否かの段階に移ります。いわゆる証拠調べ手続きです。証拠調べ手続きは、裁判の中核をなすものであり、この立証の善し悪しにより被告人の有罪・無罪、情状の程度が決まることとなります。

 

  冒頭陳述

  まず、検察官が証拠によって立証しようとする事実を述べます。この冒頭陳述で検察官が描きたいストーリーが明確になりますので、被告人としてはそれに間違いがないのか、まったく違うのか、それとも概略あっているけれど、違う部分もあるのかを見極めないといけません。

  また、自白事件の場合は、被告人・弁護人側の冒頭陳述は通常しませんが、否認事件の場合、被告人・弁護人側も冒頭陳述をすることがあります。検察官の冒頭陳述により描き出されたストーリーと異なるストーリーを展開することで、裁判官が安易に検察官の主張するストーリーを信用しないようにすることとなります。

 

  証拠調べ請求

  次に、証拠調べ請求がなされます。検察官が公判廷で取り調べてもらいたい証拠を裁判所に提出する手続きです。

  これらの証拠は、事前に取り調べ請求を予定している証拠として、弁護人に開示されていますので、それを証拠として認めるか否か事前に検討し、被告人・弁護人側でその採否を自由に決めることができます。

  日本の裁判は、証拠により事実を認定する証拠裁判主義がとられていますから、どのような証拠が裁判官の目に触れるかが大変重要です。ほとんどの証拠は、被告人に不利益な証拠なので、否認事件の場合は、大半が不同意の扱いになり、自白事件の場合は、ほとんど同意することになります。

  痴漢事件の場合、証拠の同意・不同意で問題となるのが、被害者の供述調書です。供述調書は検察官や警察官の面前で取り調べをしてその言い分を書面にしたものですが、否認事件の場合は、当然、不同意とするわけです。そうしますと、被害者を証人として取り調べを受けないといけなくなってしまいます。

 これが、性犯罪被害者の二重の苦痛となってしまうわけです。このような証人については、遮蔽措置やビデオリンク方式がとられ、被告人と直接会わないようにするといった特別な対策がとられますが、苦痛は軽減されてもなくなりはしないでしょう。

 

 弁論手続き

 証拠調べが終わると、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならず、被告人及び弁護人は意見を陳述することができます。

 検察官の意見を論告といい、裁判所で取り調べた証拠から検察官の考えるストーリーをまとめた集大成といえます。この論告に引き続き、検察官は求刑を述べることになります。 

 検察官として裁判所に被告人に科してもらいたい判決の内容になります。もちろん、検察官の求刑意見ですから、被告人・弁護人としては、厳しい求刑であると感じることが多いです。

 検察官の論告・求刑のあと、弁護人の最終弁論を行います。弁論の目的は、公判においてあらわれた全ての証拠から被告人に有利な事実拾い出し、それを構成し、被告人の無罪、あるいは被告人にとって有利な情状を裁判所に理解してもらうことにあります。

 その後、自白事件の場合など有罪を前提とした弁論をした場合には、量刑についての意見を述べることになります。

 

4 判決宣告

 論告・弁論手続きが終わると、通常、その日の期日は終わり、1週間後を目処に判決期日が入ります。

 判決期日では、裁判所から、裁判所の認定した事実が開示され、有罪・無罪と刑の種類、また、執行猶予の有無について述べられます。

 

 

カテゴリー: 痴漢事件 - 2009年11月7日